地球写真家 石井友規
監 督 作 品
4K
ドキュメンタリー映画
神々へ捧げる二つの織物の物語
あらすじ
失われつつある「⿇」と「絹」の伝統技術
そして⼤嘗祭から垣間⾒るアニミズム⽇本の姿
新しく即位した天皇が執り行う大嘗祭。秘すべきことが甚だ多いその儀式にて八百万の神々へ捧げる重要な祭祀具に二つの織物、徳島県の麻織物・麁服(アラタエ)と愛知県の絹織物・繒服(ニギタエ)が存在する。なぜ代々その地から宮中へ調進されるのか。麻と絹とは何か。そして神さまとは。これらの歴史を紐解き、それぞれを取り巻く現在の姿を追い、伝統、ものづくり、継承の苦難、お米、感謝の心など、失われつつある日本人のアイデンティティーを照らしてゆく。
瑞穂の国、日本。
けれども、この国はこの先どこへ向かうのか。
監督メッセージ
「いただきます。」と手を合わせる心を伝えたい。
今私たちが住む日本では、余程のことがない限り食事に困ることはありません。
しかし一昔前までは自然の摂理により豊作や不作がありました。
だからこそ人々は自然を神様と崇め、感謝し、お祀りをし、無事の収穫の暁には様々な御礼の品を捧げ、精巧な工芸や芸能をもってもてなしを尽くしました。
それは、全て生きるためでした。
けれど私たちは「いただきます。」と手を合わせる意味を忘れてしまい、命をいただいていること。様々な奇跡の上に生かされている感謝が霞み、大量の食品ロスに、弔われることのない多くの命。そしてそれを起因とする温室効果ガスの排出。収穫の感謝祭でもある地域のお祭りは途絶えそうになり、子供たちはお神輿に乗らなくなり、手仕事は量産化され魂が宿らなくなり、ついには日本人が日本人であることを忘れてゆく。
私たちはそんな時代が目の前に迫っていることさえ気づいていません。
この五穀収穫を天皇陛下御自ら神々へ感謝を捧げる大嘗祭。
そこへ重要な祭祀具として奉るこの二つの織物は、まさに私たちが生かされていることへの感謝を胸に最高の手仕事で施されています。
しかし、それが未来永劫続く保証はありません。
私たちが本当に「いただきます。」と手を合わせることができなくなったその日に、今まで連綿と続いてきた日本の伝統文化とものづくりと共に途絶えてしまうのではないか。
日本というアイディンティティそのものが消え去ってしまうのではないか。
私は取材を通じそれを強く危機感を感じています。
なぜ地球環境は悪化するのか、
なぜ児童、動物虐待が続くのか、
なぜ伝統文化の担い手がいないのか。
その原因と考えられる現状をこの映画に凝縮させました。
さらに私たちが眠らせてしまった感謝への心を、この映画を通じて多くの人へ思い出してほしい。
そう願って上映会を続けています。
地球写真家・石井友規